コレクション: 特集2
大阪のご当地教科書「にんげん」ーーーあの道徳の時間のことを、覚えていますか
小学校の道徳の時間というと、
私の中ではまず、教室の隅に置かれたテレビの光景が浮かびます。
普段は使われないそのテレビに、先生がスイッチを入れ、
カーテンが少し閉められる。
教室の空気が、いつもとは少しだけ変わる瞬間です。
はじめに流れるのは、明るい歌でした。
口笛吹いて空き地へ行った。
知らない子がやってきて、遊ばないかと笑って言った。
ひとりぼっちはつまらない。
誰とでも仲間になって、仲良しになろう。
歌のあとには、15分ほどの短いドラマが続きます。
誰かが仲間外れになる話だったり、誤解が生まれて、最後に少しだけ分かり合える話だったり。
子どもながらに、「これは道徳の時間なんだな」となんとなく理解できる、そんな内容でした。
そして、番組が終わる。
そのあとです。
ほとんど前ぶれもなく、
先生が一冊の本を開き、朗読が始まる。
それが『にんげん』という教科書でした。
表紙の絵は、正直、少し怖かった。
暗い色合いで描かれた子どもの顔が、こちらをじっと見ているような印象が残っています。
中の話は長く、方言が多く、
小学生の私には、内容を理解するのは簡単ではありませんでした。
先生は、淡々と読んでいたように思います。
詳しい説明があったかどうかは、もう覚えていません。
ただ、さっきまでテレビから流れていた明るい歌やドラマとは、まるで別の世界に放り込まれたような感覚だけが、
今も記憶に残っています。
何を学んだのかと聞かれれば、
うまく答えられません。
でも、「これは軽い話ではない」ということだけは、
子ども心にも、確かに伝わってきました。
大阪の小学校で過ごした、ある世代にとって、この「にんげん」はそんなふうに強い印象とともに記憶に残っている教科書ではないでしょうか。
もし『にんげん』について、
覚えていることがあれば、
どんな些細なことでも構いません。
教えていただけたら嬉しいです。